「仕組み化」というものは長らく大手企業のものでした。大きな開発費と専任の人員を投じられる会社だけが業務をシステムで回す体制を取り入れることができていました。いま、その前提がAIの登場で崩れ始めています。
仕組み化は大手の専売特許ではなくなった
AIを使うことで、以前は大手しかできなかった仕組み化が超低コストで実現できるようになってきました。さらに自動化のレベルは、これまでとは次元が違います。
エンジニアを何人も抱えなくても、業務の流れを整理して伝えられれば仕組みは組める。
これまで費用対効果で見送られてきた細かな業務まで仕組み化の対象に入ってきています。
大手が何年もかけて整えてきた仕組みを、後発が一気に飛び越えられる。
規模の差がそのままスケールの差になる時代は終わりつつあります。
この変化はまだ始まったばかりです。
今やる会社とそうでない会社では1年後に大きな差がついてきます。
仕組みは動かし始めてから育つものだからです。
使いながら直し、その過程でノウハウが社内に貯まっていく。
様子見の1年と運用の1年ではまるで意味が違います。
知らない、よくわからない、セキュリティが不安。
多くの会社が同じ不安で足踏みしている今だからこそ、飛び込んだ会社が先行者利益を享受できる。
その状況が「今」です。
効率化とスケール化が両立する
AIで仕組みをつくると、まず単純に業務が速くなります。
見積もりや請求、問い合わせ対応のような定型業務が自動で流れるようになる。
優秀な担当者が疲れずに何人分も働いてくれるイメージです。
ただ、本質は効率化にとどまりません。
AIの仕組みは「効率化」と「スケール化」を両立できます。
これまでは量を増やせば質か利益のどちらかが削れました。
効率を守るには扱う量を絞るしかなかった。
その2択が消えます。
定型の部分をAIが巻き取るぶん、少ない人数のまま扱える量を増やせる。
それでいて1件あたりの質は落とさない。
価格を下げても回る会社と、下げたら苦しくなる会社が同じ市場に並ぶ。
つまり、新しい価格競争のパラダイムへの変化が始まるということです。
自社が変わらなくても、競合がこの仕組みを手に入れた瞬間に価格と量の常識は書き換えられてしまう。
対岸の火事ではありません。
そのうえで、仕組み化によって生まれた時間の使い道が次の分かれ目になります。
浮いた時間を新しい付加価値を生むサービスや商品の開発に使い、既存のモノ・サービスをより高付加価値のものへ昇華させていく。
仕組み化はそれ自体がゴールではなく、その先の開発に時間を回すための土台です。
この開発や進化にもAIが使われるため、かかる時間は従来とは比較にならないペースになっています。
競合が1つ改善を出す間にこちらは何度も改善を重ねられる。
このサイクルの差が積み重なっていきます。
最後に残るのは「思想」
AIで誰でも仕組み化できるということは、その仕組みもいずれ真似されるということです。
模倣されるモノは模倣されて、より強い価格競争に飲まれて消えていく。
だから模倣されない仕組みをつくる必要があります。
では、何が模倣されないのか。
機能は真似できますし、価格も追いかけられます。
真似できないのは、その会社が何を大事にしてきたかという積み重ねだけです。
先に顧客を獲得し、ファンになってもらい、競合に真似されても顧客が離れない「思想」や「理念」を浸透させる。
これからの時代を生き残るキーはここだと考えています。
順番も重要です。
先行者として、先に顧客との関係を築いてしまうことで、後から同じ機能を出されても関係までは奪えません。
表面的なものではない、本当の意味で真の思想や想いがインストールされたサービスやモノは、それを使う「人」に必ず伝わります。
新製品を出したときに「ああ、やっぱりこの会社の製品は好きだな」と思ってもらえるかどうか。
そう思ってもらえた瞬間、その製品は価格や機能の比較から抜け出しています。
具体的な作業や行動はこれからどんどんAIに置き換えられていきます。
一方で、この「思想・想い」だけはAIには置き換えられません。
人とAIの役割分担がはっきりしてきたということです。
だからこそ、このソフト面をいかに自社の製品に反映させ溶け込ませるかを今まで以上に時間をかけて計画する必要があります。
自社は何のためにこの製品をつくっているのか。
その答えを言葉にして製品の細部にまで行き渡らせる。
接客にも文章にも設計にも、同じ想いが流れている状態をつくる。
ここにかけた時間が模倣されない資産になります。
さいごに
仕組み化というと業務フローや自動化の話だと思われがちですが、本質はその先で何をつくるかです。
管理職や経営者が意識すべきは「作業・仕事」の仕組み化だけでなく、「思想・想いを練り込む」ための仕組み化です。
前者はAIに任せられますが、後者は人にしかつくれません。
AIによる仕組み化はそのための時間をつくる手段でもあります。
そもそも経営者の本来の仕事は昔からこちらだったはずです。
まずは小さな業務のAI化から始めて、浮いた時間で自社の思想を言葉にする。
そこからがスタートになると思います。